贈与税の税率の特例

直系尊属(父・母・祖父・祖母など)から暦年課税の対象となる贈与を受けた際には一定の

要件の下、贈与税の税率の特例を適用できます。

 要件としては、

・直系の尊属(父・母、祖父・祖母など)からの贈与であること

・贈与を受けた者がその年の1月1日で20歳以上であること

 (令和 年4月以降は18歳以上)

・計算明細書、戸籍謄本などの一定の書類を添付して申告を行うこと

などがあります。

600万円を貰った場合、通常の税率では、

600万円 − 110万円 = 490万円

490万円 × 30% −65万円 = 82万円

の贈与税がかかります。

特例の税率では、

600万円 − 110万円 = 490万円

490万円 × 20% − 30万円 = 68万円

の贈与税となります。

通常税率と特例税率

税率の違いは以下のようになっています。

 基礎控除後の

 課税価格       通常税率  控除額     特例税率  控除額   

  200万円      10%   ーー      10%   0万円

  300万円以下    15%  10万円      −−   −−

  400万円以下    20%  25万円     15%  10万円

  600万円以下    30%  65万円     20%  30万円

 1000万円以下    40% 125万円     30%  90万円

 1500万円以下    45% 175万円     40% 190万円

 3000万円以下    50% 250万円     45% 265万円

 3000万円 超     55% 400万円     −−    −−

 4500万円以下     −−    −−      50% 415万円

 4500万円 超      −−    −−      55% 640万円

 特例税率は特別措置となっています。

実父と義理の父からそれぞれ財産を貰った場合

見出しの例の場合は、父からの贈与財産は特例の贈与財産、義理の父からの贈与財産は通常の

贈与財産となります。

例えば父から500万円(特例贈与)、義理の父から200万円(通常贈与)受け取ったとし

ます。

①全ての贈与財産を特例の贈与財産として贈与税を計算

 700万円 ー 110万円 = 590万円

 590万円 × 20% − 30万円 = 88万円

 88万円 × 500万円 ÷ 700万円 ≒ 62.8万円

②全ての贈与財産を通常の贈与財産として贈与税を計算

 700万円 − 110万円 = 590万円

 590万円 × 30% − 65万円 = 112万円

 112万円 × 200万円 ÷ 700万円 = 32万円

①と②の合計

 62.8万円 + 32万円 = 94. 8万円 が納付する贈与税額

 となります。

直系尊属から住宅取得等

直系尊属から住宅取得等のためにお金の贈与を受けた場合には非課税限度額の範囲内で

贈与税が非課税とされています。住宅取得等には、新築、建売住宅の購入、中古住宅の

取得、増改築、これらに伴う土地の取得が含まれます。

非課税限度額は以下のとおりです。

 契約締結日                省エネ住宅等   左記以外

平成27年12月31日まで           1,500万円  1,000万円

平成28年  1月  1日から令和 2年 3月31日  1,200万円    700万円

令和  2年  4月  1日から令和 3年 3月31日  1,000万円     500万円

令和  3年  4月  1日から令和 3年12月31日     800万円   300万円

契約金額の消費税額が10%の場合

平成  4年  4月  1日から令和 2年 3月31日  3,000万円  2,500万円

令和  2年  4月  1日から令和 3年 3月31日  1,500万円  1,000万円

令和  3年  4月  1日から令和 3年12月31日  1,200万円   700万円

 主な適用要件などは以下のとおりです。

・直系尊属からの贈与で受け取る人が受け取る年の1月1日時点で20歳以上であること。

・受け取る人の受け取る年の合計所得金額が2千万円以下であること。

・贈与を受けた翌年3月15日までの居住すること、又は12月31日までに居住すること。

・省エネ住宅等とは、エネルギー使用の合理化に著しく資する住宅、地震に対する安全性に

 かかる基準に適合する住宅、高齢・障害者が自立した生活を営むのに必要な構造設備基準

 に適合する住宅をいいます。

・新築・取得した住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下で、1/2以上が受贈者が使用すること

・中古住宅の場合、築20年(コンクリート造の場合築25年)以内であること。

・中古住宅の場合には、耐震基準を満たす必要があります。

・増改築の場合は、自己の居住している家屋であること。

・増改築の場合は工事金額が100万円以上であること。

この非課税制度を受けるためには、一定の申告書を翌年3月15日までに提出する必要が

あります。

災害により住宅が滅失した場合でも適用があります。

贈与税の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦間において、居住用不動産等を贈与した場合には、2千万円

までの贈与については税金がかかりません。

・夫から妻への贈与、妻から夫への贈与のどちらでも使えます。

・お金を貰って、翌年の3月15日までに居住用不動産を取得した場合も使えます。

・お金を貰って、信託受益権を取得した場合にも使えます。

・20年の婚姻期間の判定は、贈与の時に20年経過しているかどうかによります。

・居住用不動産には、土地の上に存する権利も含まれます。

・離婚して同じ人と再婚した場合、夫婦でなかった期間は婚姻期間から除かれます。

・この控除を受けるためには申告書を提出する必要があります。

・申告書には戸籍の謄本又は戸籍の抄本及び附表の写しを添付する必要があります。

・居住用不動産については、その登記事項証明書を添付する必要があります。

・2千万円を超える部分については、通常の贈与税率により贈与税がかかります。

相続時精算課税制度

60歳以上の親から20歳以上の推定相続人に財産を贈与した場合には、2500万円までは

贈与税が非課税となる贈与税の特例を受けることができます。2500万円以上は一律20%

の税率で納税を行うこととなります。

相続が開始(親が死亡)した場合には、この特例制度を受けた財産を相続財産に加えて相続税

の申告を行います。20%の納税をしている場合には、この税金は相続税額から控除されます。

納付額が多い場合には還付を受けることができます。

・令和4年4月1日以降は、20歳以上ではなく18歳以上となります。

・この制度を受けるためには、贈与税の申告期限までに届出を行う必要があります。

・届け出た贈与者からの財産の贈与は、この制度を必ず受ける必要があります。

・この制度の撤回はできません。

・この制度は、父・母別々に贈与者ごとに適用を受けることができます。

・親以外の者から贈与を受けた場合には、この制度ではなく110万円控除後の

 課税価額に贈与税率をかけて計算する、通常の贈与税の申告が必用となります。

・住宅を取得するために資金を貰った場合にもこの制度を使うことができます。

・住宅取得資金の贈与の非課税制度との併用ができます。

・事業承継税制での非上場株式についても適用があります。

・相続税の申告の際に相続財産に加算されるこの制度を受けた財産の価額は、

 この制度を受けた時の価額となります。

概要、主な点については以上のようになっています。 

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