平成25年税制改正

 平成25年税制改正法案が3月29日成立し、30日に公布、4月1日に施行されました。

 所得税、相続税を中心に大きな改正が行われました。

 所得課税においては最高税率の見直しにより590億円の増税見込み、

 資産課税では、相続税の基礎控除の見直しにより2,570億円の増税見込み

 法人課税では設備投資、雇用拡充税制等により3320億円の減税見込み

 となっています。主なものは以下のとおりです。

 所得課税

  最高税率引き上げ

  非課税口座内の少額上場株式等にかかる配当・譲渡所得等の非課税

  住宅借入金等の税額控除

資産課税

  相続税の基礎控除の見直し

  事業承継税制の見直し

  教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税

  その他の改正

法人課税

  民間投資の喚起

  雇用・所得の拡充

  交際費の中小企業特例の拡充

 平成24年度の税制改正は、すっきりとした成立の仕方ではなく、何回かに分かれて国会を通過することにより分割して成立しました。わかりにくい改正の仕方となりましたが、重要な改正が行われています。

 改正の内容は、各税目の欄に記載します。

 その他一言 ・ ・ ・ 。

 自民党政権に国民が嫌気をさし、とりあえず変えてみようということで民主党政権になりました。しかし、民主党政権からはまたまた国民の心が離れていっている感じがします。

 税制改正関係についてだけみてみると、民主党政権になり今まで懸案となっていた改正が行われたり、改正に関係する情報が取得しやすくなるなど大変ありがたい仕事をしてくれていると感じます。一つだけ挙げると、更生の請求が行える期限が1年から5年に伸びたことがあります。

 ただ、増税の話もありますので、プラスマイナスゼロ? でもないと思いますが、総合してプラスなのかマイナスなのかは何に判断の基準を求めるかによりますので、その判断は歴史にまかせるとします。

 私が民主党関係の人間だからこのようなことを書いているのではありませんので申し添えます。

ご存知のように、政治が混乱しています。

それは税法の改正にも影響をあたえました。

平成23年税制改正は、期限切れになる租税特別措置や批判を受けにくい

税制改正は行われましたが、平成23年度税制改正案の主だった改正は

行われていません。

注目すべき改正をいくつかあげてみました。

事業を新たに開始した個人、新設法人は2年間は消費税の申告が必要ありませんでした。

このたびの改正で例えば、第1期目の前半6ヶ月間に1,000円超の課税売上高がある場合

には第2期目から消費税の申告が必要となります。しかし、同期間の給与等の支払い額が

1,000万円以下であれば第2期目の申告もしなくて済みます。

会社を新たに設立し、分業したような場合に注意が必要です。

上記の例は、新規開業の方を例にしています。

上記改正は平成25年1月1日以後開始した課税期間から適用となります。

見出しの内容は →  こちら

1年間の公的年金の収入金額が400万円以下でかつ、公的

年金等の雑所得以外の所得所得金額が20万円以下の場合、

確定申告が不要となりました。

還付申告は提出可能です。

住民税は別なので、申告の必要があります。

年金所得者の場合、年金支払者に「公的年金等の扶養控除

申告書」を提出すると扶養控除はうけた状態で源泉徴収票を

発行してもらえます。生命保険料控除、医療費控除等を受け

る場合には確定申告をする必要があります。

通勤手当を支払っている会社は多いと思います。

通勤手当は、通勤距離に応じて所得税がかからない金額(非課税枠)が決まっています。

今までは最も経済的かつ合理的な運賃相当額が非課税枠を超えていれば、その運賃相

当額までの通勤手当は10万円を限度に所得税がかかっていませんでした。

 改正により10万円の限度額はなくなり非課税枠を超えた通勤費は、給与として所得税を

源泉徴収することになります。

会社の負担(事務の負担は増えますが ・ ・ ・ )は変わらないのですが、従業員の方の所得

税が増えることになります。

なお、この部分に関する消費税の改正は行われていませんので、通常必要と認められる部分は

消費税の課税仕入れに該当することは変わりありません。

通勤費は、税務調査の際には調査官は見る部分ですので、注意してください。

この改正は、平成24年1月1日以後に支払う通勤手当について適用されます。

平成22年の改正により保険料控除の金額が変わります。

平成24年1月1日以後に契約を締結した一般の生命保険料

個人年金保険料の控除が最大4万円となり、新たに介護医療

保険料控除が新設されこの控除額も最大4万円となりました。

最大で12万円の保険料控除が受けられることになります。

23年12月31日以前に締結した一般の生命保険料控除、個人

年金保険料控除の控除額は5万円のままです。

 従前の保険料控除で10万円の控除、介護医療保険料控除

で4万円の控除、合計14万円としたいところですが、12万円が

控除額となりますので気を付けてください。

保険料控除を受けられることがセールストークの一つである

保険の募集ですが、本当に必要かどうかを基準に保険の加入を

考えてください。控除が受けられたとしても税金の額にして数千円

ということが多いと思います。

それよりも不必要なお金を支出しないことが大切だと思います。

保険会社の人に怒られてしまいそうですが ・ ・ ・ 。

見出しの正式名称は「更正の請求期間の延長」です。

平成22年分の確定申告を行った所得税の計算等に誤りが見つかった

場合、今までは平成24年3月15日までに更正の請求を行えば所得

金額を減額してもらうことができました。

改正により、平成23年12月2日以後に法定申告期限が来る国税は

5年間(今までは1年間)更正の請求を行うことができるようになりました。

平成23年分の確定申告を行った所得税の計算等に誤りが見つかった

場合、平成29年3月15日まで更正の請求を行うことができます。

また、 

平成23年12月2日以前に法定申告期限が来ている国税についても、

所得を減額してもらうための制度ができました。

結局、過去・将来かかわりなく5年間は所得減額のための更正の請求

を行えることになったということです。

所得税、法人税、消費税等の国税全般に適用されます。

今まで、法定申告期限から1年超経過した国税は法律の規定のない

「嘆願書」という税務署への嘆願という不思議な制度にて実務では対応

していました。これは、税務署の調査が入れば1年を超えて所得の増額・

減額を行えるため、調査を依頼(所得減額を依頼)していたということです。

私も嘆願書に基づき調査を行い5年間所得金額を減額したことがありま

すが、早く制度を変えればいいのにと思っていました。

1年間に制限していた理由は、事務負担の増加に耐えられないからという

ことと、法的安定性という理由です。

少しずつ税務の面でも、国と国民が対等になってきたということです。

12月10日平成24年度税制改正大綱が決まりました。

最後は自動車関係の税金を政府と民主党との間で微調整して

決定しました。平成23年度税制改正大綱にのせられいたもの

もあり、平成23年にのっていたもので削られたものもあり、とい

ったところです。

調整の状況からみると、増税はしたいものの批判の多そうな内

容の改正は先送りし、大衆受けしそうな内容の減税を加えたよ

うです。選挙対策でしょうか?

所得税では給与収入1,500万円超の人は給与所得控除を245

万円を上限とする改正、退職金課税で勤続年数5年以内の法

人役員等の退職所得は二分の一課税を廃止する内容。

相続・贈与税関係では親から子への住宅取得資金贈与課税の

緩和、連帯納付義務の一部解除。

法人税では今までの制度の延長といったところです。

国際課税関係では、国外財産調書の提出が記載されています。

5千万円を超える国外財産の調書提出を義務付けるもので、こ

れを提出している場合で関係する国税の申告漏れがあった場

合には加算税の5%減額、提出がなかった場合は5%増額とい

うものです。面白い制度だと思います。

検討事項とされている制度として目に付いたのは、社会保険診

療報酬の所得計算特例の見直し検討です。概算での必要経費

の計算につき、お医者さんにメスが入りつつあるということです。

以上は税制改正大綱のほんの一部であり、まだ国会を通過した

わけではありません。平成23年度大綱のように、主要部分は改

正されないということも十分考えられますのでご注意ください。

野党が強く否定できそうな内容のものとも思えませんが・・・。

各政権が避けて通ってきた消費税についても、いつどうするのか

といった具体的内容はなく、読み手にインパクトを与えない記述

となっています。

ネットで稼ぐ人は適正な申告を

令和元年に創設された「特定事業者等への報告の求め」という条文があります。

これは特定取引者と表現される、ネットで稼ぐ人、の所得を適正に把握するために

作られた条文です。

これを一言でいうと、ネットで稼ぐ人で申告をきちんと行っていないと思われる人

の情報提供を特定事業者に法律で強制する、というものです。

ネットで取引を行う人で申告を行っていない人のことはNHKでも以前から特集で

報道されていました。密室(自分の部屋)で取引をパソコンの前で行っているので

誰も知らないと思っているのかもしれませんが、ネットほど取引を秘匿しにくいもの

はないのではないかと思います。

自分のパソコンの情報は、パソコンを物理的に破壊すればそれで抹消できますが、

他の人や事業者とつながって取引をしている場合には、相手方がその情報を抹消しない

限り相手方に残ってしまいます。

今までは強制的な法律上の明確な根拠なく行っていた情報の収集が、部分的にでも強制力

を持って行えるようになったということは覚えておく必要があると思います。

令和2年度改正 所得税

令和2年度の税制改正が、令和2年3月27日に国会で可決・成立しました。

例えば、次のような改正が行われました。

〇未婚のひとり親で生計を一にする子がいる場合、合計所得金額が500万円以下

 で事実婚の者がいない場合などには35万円の所得控除ができます。

〇扶養控除の対象者から30歳以上70歳未満の非居住者が原則除外されました。

 ただ次の者は引き続き扶養控除を受けることができます。

 ・留学で日本に住んでいない者

 ・障害者

 ・生活費、教育費として38万円以上を受けている者

 また、確定申告や年末調整などで上の人の扶養控除を受ける場合、証明するような

 書類の提出が必要になりました。

  (これらは令和5年分以後の所得税から適用になります。)

〇配偶者居住権が設定されている土地建物を譲渡した場合の、譲渡金額から差し引く

 取得費の規定ができました。

〇雑所得を計算する際の売上、費用について、収入金額・支出金額で計算することが

 できるようになりました。未収・未払を計算しなくてもいい、ということです。

  (令和4年分の所得税から適用になります。)

〇医療費控除を受ける際の添付書類において、領収書ではなく、医療費の額を通知する

 一定の書類を添付することができるようになりました。

  (令和3年分の所得税から適用になります。)

以上のような改正があります。

他にもありますのでまた追記します。

低・未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除

低・未利用土地等というものがあります。

読んで字のごとしですが、

適正な利用が図られるべき土地であるにもかかわらず、長期間に渡り利用されていない

「未利用地」と、周辺地域の利用に比べて利用の程度が低い「低利用地」のことをいいます。

また、その土地の上にある権利も含めて「等」がついています。

このような土地の流通を促すために、土地を売却して利益が出た場合に控除を行える、

という制度が創設されました。

控除の条件などとしては、

・都市計画区域内にある土地等であること

・5年超の所有期間があること

・低・未利用地であることの市区町村長の確認があること

・所有者の配偶者や、所有者と特別の関係がある者への売却でないこと

・建物が建っている場合でも総額500万円以下の譲渡金額であること

・令和2年7月1日から令和4年12月31日の期間内の譲渡であること

 (延長の可能性大いにあり)

・100万円までの利益控除

があります。

国外中古建物の不動産所得による損失の特例

これは主に富裕層において行われている、節税対策を封じるための令和2年度改正です。

国外にある建物を購入して、その耐用年数を中古取得資産の耐用年数により算定します。

それにより減価償却計算を行い不動産所得で損失を計上し、不動産所得以外の所得、

例えば、給与所得などから損失を差し引く、という方法があります。

富裕層なので多くは最高税率(約50%)などで課税されていますので、損失を計上する

とその損失部分の税金が減少します。

さらにその建物を5年超えてから譲渡すると長期の譲渡所得として計算され、約20%

の税率で利益に対する税金が課税されます。

これは日本では、中古取得資産の耐用年数は短く設定される特徴があるので、早く減価

償却費を計上できるところが有利になります。また、日本と違い海外では、建物の価値は

上がるところもあります。このあたりの違いを使い節税を行う方法が一つ減ることに

なります。

この不動産を譲渡した場合には、認められなかった減価償却費部分は譲渡所得から控除

できます。

これらが節税対策ではないと考えられる場合にはこの改正は適用されず、以前のままで

損失の計上もできます。それは

・建物の耐用年数を中古取得資産の耐用年数で計算していない場合

・その建物の耐用年数が建物の所在地国の法令による耐用年数でありその年数が適切

 である場合

です。

この改正は令和3年以降から適用されます。

令和3年の確定申告期限

令和3年の確定申告期限がそろそろ見えてきましたが、今年は例年と異なり期限が1か月延長

されました。これはコロナの感染拡大防止が目的です。

〇申告期限・納付期限

申告所得税         令和3年3月15日 → 令和3年4月15日(木)

個人事業者の消費税   令和3年3月31日 → 令和3年4月15日(木)

贈与税            令和3年3月15日 → 令和3年4月15日(木)

〇振替納税の日

申告所得税         令和3年4月19日 → 令和3年5月31日(月)

個人事業者の消費税   令和3年4月23日 → 令和3年5月24日(月)

十分な申告期間を確保して、確定申告会場の混雑回避の徹底を図るためとされています。

これはコロナの影響の状況に関係なく、全国一律の延長となっています。

税務関係書類の押印見直し

税務関係書類について何かと面倒なのが押印でした。

押印を忘れると書類が戻ってくるか、税務署から電話があり押印を行いに税務署に来署を

促されるか、押印しないと書類を受け付けてくれないのでどうしようもありませんでした。

コロナの凄さを思わされるのは、この原則押印の取り扱いが一定の場合を除き見直される

ことになったことです。

押印なしの例外として、

1、税金の延納や物納の際に担保を提供して登記を行う必要がありますがその際の押印

2、遺産分割協議書への押印

があります。

これ以外には押印をしていなくてもそれでいいという取り扱いになりました。

これは令和3年4月1日以降の取り扱いの予定ですが、閣議決定がされているのでその前に

提出する書類にも柔軟に対応することになっています(適用されます。)。

テレワークが難しい原因の一つに挙げられていたのもこの書類への押印でしたので国が動いた

ことで、民間でもさらに動きが加速することになると思われます。

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